ソリスト木嶋真優の深い精神性、高揚しっぱなしのベートヴェン「交響曲第7番」~兵庫芸術文化センター管弦楽団 第136回定期演奏会~

【PACファンレポート58兵庫芸術文化センター管弦楽団 第136回定期演奏会】

初登場の指揮者ミヒャエル・ザンデルリンクとの共演が期待されていた10月8日の演奏会。コロナ罹患で彼の来日がかなわなくなり、急きょ貴公子クリスティアン・アルミンク(広島交響楽団首席客演指揮者)が指揮台に立った。PACとは2013年10月の第67回定期演奏会以来 共演を重ね、今回が5度目。ベートーヴェンはピアノ協奏曲第3番を93回にクンウー・パイクの独奏で披露したことがあったが、交響曲は初めて。しかも気分が高揚する第7番! ということで、またしてもいそいそと西宮北口に足を運んだ。

冒頭はJ・シュトラウス2世(1825-1899)の喜歌劇「こうもり」序曲。ウィーン生まれの指揮者アルミンクが優雅な指揮姿で、軽快なリズムが跳ね踊る宮廷の舞踏会へ聴衆を連れていく。ティンパニを叩いていたのは宝塚市出身の新メンバー、森山拓哉だった。

ソリストは木嶋真優。トップスはマットな黒、ボリュームのあるボトムスは民族調の色模様の不連続なボーダーが織り込まれた光沢のあるシックなドレスで登場から目を引いた。

自身が好む曲というアラム・ハチャトゥリアン(1903-1978)の「ヴァイオリン協奏曲」を豊かな情感をたたえて縦横無尽に弾きこなす。NPO法人イエロー・エンジェル、宗次コレクションより特別に貸与されたAntonio Stradivari 1699 “Walner”から多彩な音色を繰り出してくる演奏姿が凛々しく美しい。

ソリストのアンコール曲は即興演奏(コミタス:祈り 及び イグデスマンの作品より)。演奏する楽器との信頼関係というか、愛情というか、演奏からそういう精神的なものが感じられる、素晴らしい演奏だった。

今シーズンのプログラムの表紙で寺門孝之さんの描くテーマは「風」

そして、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)の交響曲第7番。実は2021年の特別演奏会「withベートーヴェン」と、今年6月に山口県周南市で佐渡さんが指揮した「新日本フィルハーモニー50周年記念演奏会」に駆けつけて聴いた時の佐渡さんの指揮姿が目に焼き付いていて、アルミンクさんの指揮姿に佐渡さんが何度もダブって見えた(アルミンクさん、ごめんなさい!)。

PACメンバーは舞台中央に位置するフルート、オーボエ、クラリネット、バスーンの連携が素晴らしく、呼応し合うメロディーがいきいきと躍動し、どんどん気分を高揚させてくれた。漫画が原作で、映画化もされた人気のテレビドラマ「のだめカンタービレ」で、クラシックファン以外にも広く知られるようになったこの曲は、本当に極めて現代的な響きを持つ曲だと改めて思う。

オーケストラはアンコールに交響曲第7番の第4楽章からの抜粋を演奏。上がりっぱなしの気分のままで劇場を後にした。

コンサートマスターは豊嶋泰嗣。ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの瀧村依里(読売日本交響楽団第2ヴァイオリン首席)、ヴィオラの中島悦子(関西フィルハーモニー管弦楽団特別契約首席、神戸市室内管弦楽団奏者)、コントラバスの黒木岩寿(東京フィルハーモニー交響楽団首席)。スペシャル・プレイヤーはホルンの五十畑勉(東京と交響楽団奏者)。PACのOB・OGはヴァイオリン6人、チェロ、コントラバス、ホルンが各1人参加した。(大田季子)




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